過去が暴れる①|新清洲駅の歯科・歯医者なら、岡崎歯科

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過去が暴れる①

過去というものは、もう少し行儀のいいものだと思っていた。古いアルバムの中に収まり、こちらがページを開いた時だけ姿を現す。懐かしいねえ、そんなこともあったねえ、とこちらの都合で呼び出せるものだと思っていた。

違った。

過去は、ときどき勝手に暴れる。五十六歳にもなって、仕事のこと、人のこと、自分の至らなさなどを考えていると、突然、七歳の私が出てくる。

小学校2年生。蟯虫検査に引っかかった。担任の先生がホームルームで、「オカザキだけ引っかかったぞ〜」と言った。昭和52年である。現在ならいろいろ問題になるのだろうが、当時の教室ではその一言をきっかけに世界が猛烈な速度で動いた。

クソムシおっかん。私は「おっかん」と呼ばれていたので、語呂までよかった。

子どもというものは残酷でありながら、妙にコピーライターとして優秀である。同じ頃、校庭で上級生とぶつかって失禁した。これで私は、虫と尿という、小学二年生男子としてはなかなか強力な二枚看板を背負うことになった。

今なら笑って書ける。しかし七歳の私は、まったく笑っていない。明日学校へ行くのが怖かった。多くは敵に見えた。自分は汚い人間なのだと思った。足も遅い。喧嘩も弱い。何をやっても間抜けである。どうせ自分など長く生きないだろう、とかなり本気で考えていた。

七歳にしてはずいぶん大仰だが、その一方で給食の揚げパンが出る日は嬉しかった。コロッケも食べたかった。人間というものは不思議である。人生に絶望しながら、コロッケは食べたいのである。

そんなある日、上級生に殴られた。理由はなかった。「なんかムカつく」それだけだった。殴られ、水田に倒され、泥だらけになった。やがて満足したらしい上級生が、「スッキリした〜」と言った。私はその言葉を、なぜか今でも覚えている。ああ、そういうことなのか、と思った。こちらに理由などなくても、向こうに理由があれば殴られる。人は、自分がスッキリするために他人を傷つけることがある。七歳の私は泥水の中で、世界について何か重大な秘密を知ってしまったような気がした。