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垂れ流し①
「資産形成」という言葉を耳にすることが増えた。「論理的思考」も大切だと言われる。「学歴」や「タイムパフォーマンス」や「自己投資」もそうだ。どれも間違ってはいない。これからの時代を生きる上で必要な力なのだろう。だから否定するつもりはまったくない。でも、50代半ばまで生きてきて、一つだけ伝えたいことがある。
世の中は、それだけでは動いていない。
子供の頃、近所に少々口の悪い工場のおじさんがいた。今ならコンプライアンス研修で困った顔をされるかもしれない。論争になれば、きっと最後は「うるせぇ。」と言ってしまう。資産運用の話など一度も聞いたことがない。論理的に話す人でもなかった。
でも、近所で子供がいじめられていると聞けば、「つまんねことすんな。」と言いに行く人だった。子供たちは知っていた。「あのおっちゃんは逃げん。」その安心は、履歴書には書けない。資産にもならない。数値化もできない。
そして社会はそういう人たちの上に静かに成り立っている。
病院の夜勤を終えた人。夜明け前に道路を掃除する人。物流を止めない人。工場で黙々と部品を作る人。介護の現場で腰をかがめ続ける人。子供の話を最後まで聞く先生。地域で防犯パトロールを続ける人。目立たない。表彰もされない。SNSで「いいね」も集まらない。それでも、その人たちがいるから、私は今日も安心して暮らしている。本当は、そういう人への敬意こそが社会の土台であることが常態であってほしい。
最近は「優秀」が見えやすい時代になった。
発信力のある人。説明の上手な人。成果を数字で示せる人。以前では活躍の場は限られていたが、誰もが発信拠点となりうることは素晴らしい成果の一つと言える。しかし、「優位」でいることには、本人にその気がなくても、どこか人を見下ろしてしまう誘惑が潜んでいる。先生と呼ばれる私の職業もそうした例の一つだ。
人間は弱い。だからこそ、自分の立っている場所が少し高くなると、その高さを自分の実力だけで手に入れたものだと思い込みやすい。でも、その足元には、見えない誰かの努力が積み重なっている。
院長 岡崎伸一
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