言葉にできない|新清洲駅の歯科・歯医者なら、岡崎歯科

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言葉にできない

ピアニカを吹き、合間に歌う。上手くいく、はずだった。

オフコースの「言葉にできない」。

小学校卒業直前の何かの催し。体育館でなぜか一人で歌うことに。

丸坊主の僕はもうすぐ体験するはずの恋や愛ゆえに傷つけ合うことや別れや、とにかく好きな人ができたら心底大切にしたいだとかいうこと諸々を願いながら膝を抱えてオフコースの綺麗な楽曲に心をひたひたに浸していた。歌うと決まって家で練習していた時は頭にメロディが流れ、歌いながら壮大な感動に包まれ、ライブよろしく歌い終わると観客の鳴り止まない拍手の中ステージを降りる、自分もそうなると信じるあたり今思うと救いようがないのだが。

緊張が増した本番直前、ようやく根本的なことに気づいた。

頭に流れていたメロディは頭の中だけであって、実際に体育館には何も流れないのだ(当たり前だ)。

皆の前に立つと恐ろしいほどしんと硬い空気。考えてもいない沈黙の世界だった。僕の表情が死んでいたのでみんなも怪訝な雰囲気。楽しい予感のかけらもない中、ピアニカで一音一音鳴らし始めた。これはやばい!辛い!どうしよう!やめたい!そして前奏を吹き終わった。縮こまった精神状態からプルプル震えながらピアニカを置いた。早く次を歌わなきゃ。音がぷつっと切れた沈黙の中、気持ち悪いタイミングで「ららら」と歌い始めた。緊張で歌い出しが小声になった。失笑が耳に届く。この歌を知る人もいないようで「何あれ歌?」状態。誰でもいいから助けて〜!でも歌わなきゃ!「終わるはずのない愛が途絶えた」歌いながらものすごい後悔が押し寄せた。

ああ!オフコースさんすみません!あなた方の素晴らしい楽曲を汚しています!メチャクチャにしています!大人しく部屋でカーディガンに膝を入れて俯いてひたるだけにしとけばよかった!それでも終わらない、地獄の時間。本来ハーモニカが奏でられる間奏をこれまたたどたどしくピアニカで進むともう涙声に。えぐえぐ。うお〜卒業間近だけどもう不登校だこりゃ!好きなあの子もさよなら!うおうおうおうおうお!!!

どう終わったのか、あまり覚えていません。なんとか登校し続け小学校を終えると中学校では自分の中でだけオフコースを大切に聴くように。結果、妄想が進み、妄想の中で女の子を「君」と呼び架空の手紙を書き連ね、それを現実化した時、またしても気持ち悪い事件を引き起こすことになるのでした。オフコースは、小田さんは、悪くありません(当たり前だ)。

今でも時々思い出してはうわぁってなるのであります。うわぁ。