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「街の歯医者さん」として本当に伝えたい大切なこと。
25年前、歯科医師になりました。
なりたくて仕方なかった「歯医者さん」。
これから多くの人たちと関わって出会う全ての方々に貢献しよう!するぞ!と思っていました。
以前も述べましたが治療技術の向上に一心不乱に取り組んできました。大きく崩れてしまった噛み合わせや、次々と歯を失う状況への対抗策としてインプラントや矯正治療を用いて大掛かりな治療も完遂できる技術力を磨こうと取り組んできたわけです。とても大掛かりです。
HPにも載せています総合治療の治療費には閉口するわ、との声も聞きます。
当然ですよね。僕自身、治療技術を備えていなかった頃はここまでのことをするイメージすら持っていませんでした。しかしお口の中のダメージが大きいほど立て直すのは想像以上に大ごとです。
さて、この「ダメージが大きい」理由はなんでしょう?
患者さんの不摂生でしょうか。歯医者さんの不適切な治療でしょうか。
もちろんそういうこともありますが、誰のせいでもなく、もともと歯を失うリスクを抱えた状態、いわば不利な条件を抱えていたとしたら、そしてもし、それが伝えられていなくて過酷な口の中の条件をただひたすら生きてきて、時に「歯磨きしてなかったんでしょ。」と言われてしまったりするのはあまりに悲しく、そして悔しいことではないでしょうか。そしてそれは思いの外多くの方が抱えていることなのです。
2004年東京歯科大学調査で8020(80歳で20本の歯が残っている)達成者(調査対象の38%という結果)の中で反対咬合(受け口)及び開咬(前歯の重なりがない状態)の人の割合は0%という結果でした。この結果は当院の臨床でも実感するところです。
噛み合わせによって歯の残り方に差が生じることは、意外に知られていないように感じます。歯はそれぞれの形があり、居場所があり、役割分担があり、相互に影響しあって全体としての「噛み合わせ」を成り立たせています。噛み合う力は数十キロにおよび、「バランスの良い噛み合わせ」は多くの歯で受ける力を分散して長期に機能を果たすことができます。ところが、特定の歯だけが負担を強いられる場合は徐々に力負けして歯はさまざまなダメージを「症状」として危機を訴えてきます。歯には見えないほどのヒビが入り、小さな虫歯もガラスが割れるが如く広く波及し、詰め物は外れやすく、しみたり、嫌な痛みが持続したりします。多くの場合、歯並びの中で役目を果たしていない、噛み合っていない歯があり、仲間が泣いているけど自分は涼しい顔をしていたりします。それは「この歯は大丈夫」なのですが、「本来の負担を受け持っていない」とも言えます。
「歯の健康優良児表彰」という行事には反対し続けています。持ち合わせた要素を無視できない体の特徴を表彰対象にすることは歯科医療の本質を外れていると考えます。背が高くて、表彰されることが喜ばしいことでしょうか。歯磨きが大切なことは間違いなく、生活習慣と結びつくゆえ「しっかり管理できている」指標という側面は少なからずあります。が、それだけではないことは十分伝えられていると思えません。スタート条件は人さまざまです。とても難しい歯並びをしているけど弛まぬセルフケアでむし歯2箇所にとどめている人と、綺麗な歯並びで自浄性が高くむし歯0の人に優劣をつけたくありません。前者の厳しい条件下での努力には心動かされますし、手を差しのべたくなります。そして後者は恵まれた条件を授かっていることに、時に気づいてほしいと思います。
インプラントも義歯も本気で向き合ってきたから言えること、それは人生のより早い段階での「予防」であり「安定に向かう成育」に他なりません。誰もが食事を楽しみ、語り、屈託なく笑い合う、そこにお口の悩みなどあってほしくありません。予防ステーション」としての役割の重大さが身に沁みるオカザキでした。