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BLOOD ORANGE
全く唐突にBLOOD ORANGEなのであります。
まず語感がいけない。「ブラッド」と来て「オレンジ」。血と果実。
物騒なのか爽やかなのか、どっちなんだ?発音してみる。
ブラッ ・ ドォレンジ
舌の奥で濁って、最後にやわらかくほどける。危険な香りをまとったまま、ビタミンCの顔をしている。私はこういうものに弱い。もちろん実物は魅力が充満し切った果実だ。
初めてブラッドオレンジを切ったとき、断面を見て息をのんだ。
深い赤。夕焼けより濃く、ワインより透明。間違いなく反則だった。柑橘は黄色や橙色であるべきだ、という無意識のルールを軽々と踏み越えてくる。
しかも味は、オレンジの顔をしながら、どこかベリーのような陰影を持つ。なんだその二重人格は。若い頃の私は、こういう“少し影のあるもの”に簡単に持っていかれた。音楽もそうだ。
心地良い湿度を含んだメロディ。太陽の光に似合う、でありながらしっかりと熱を帯びた声。少しだけ抒情。「これは深い」と勝手に決めて、一人で酔う。
2000年代の真ん中あたり。車の窓を少しだけ開けて、ぬるい夜風を入れながら流れてきたのが、BONNIE PINKの『A Perfect Sky』。I’m looking for a perfect sky
あの一節の、 l と k の乾いた摩擦音、 perfect sky の p と sk が弾ける瞬間。意味よりも先に、発音の質感に撃ち抜かれたました。冷えたグラスの表面を指でなぞるみたいな、あの透明な音。ああ、BLOOD ORANGEだ、と全く勝手に思ったのです。そう、ただ、ブラッ・ドォレンジ、と言いたいだけなのです。
院長 岡崎伸一
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