思いがけない一面|新清洲駅の歯科・歯医者なら、岡崎歯科

電話をかける
WEB予約
お知らせ

お知らせ INFORMATION

ブログ

思いがけない一面

彼女は18歳、私は23歳だった。大学の部活の後輩で、笑うとこちらの警戒心をすべて無効化するような天真爛漫な人だった。少しずつ距離が縮まっていたある日、ふいに言われた。「私たちはきっと大丈夫、何も恐れないで。」えっ!何これ!こんなことって人生にあるのか!中原中也を読み、河島英五を聴くというその感性に、「ああ、この人は澄んでいる」と、直感した。人はこんなにも無防備に、こんなにも率直に、誰かと気持ちを交わしていいのだ、そんなことを知った。じゃれあい、笑い合い、時々お互いを傷つけ、それでも胸の震えが止まらない日々だった。出会って7年後、結婚。夢は、形を変えて続く――はずだった。ところが、家庭という現実はなかなか手強い。意見はぶつかるし、期待通りにいかないことにお互い苛立ちもする。「まあ、よくある話」である。ただし、ひとつだけ違った。彼女はそんなストレスをその時点の私が知り得ない剛腕ぶりで突破する力を持っていた。ある日、娘たちを連れて岐阜県の川に水遊びに行った。思いがけずの岩場、かなりの水深、流れ――普通なら慎重になる場面で、彼女はなぜかテンションが上がっていた。「昔から川に飛び込むの好きって言ってなかったっけ?バーイ。」そう言い残し、彼女は高さ4メートルほどの岩に登っていき、ためらいゼロで、頭からダイブした。――周りの若者たちから大歓声!娘たちは大興奮!「お母さんすごーい!」私はというと、軽く人生観が揺らいでいた。(え、今の人、うちの妻ですよね?)それからである。彼女が本来持っていた別の回路が、次々と開示され始めたのは。「あそこの山ガンガン登ろう」「今日は浴びるほど酒飲むか!」「サーフィン?面白そうじゃん、やる!」どこかで見失っていた“野性”が、家庭という枠組みの中で、むしろ自由に躍動し始めたのだ。しかし彼女のすごさは、それだけではない。ある日、ママ友の集まりから帰ってきた彼女は、玄関を開けるなりこう言った。「あ〜!さっきオーガニックがどうのこうのって話で疲れた〜!もう、どん兵衛食うばい!」そして当然のように、私にも食べるよう促してくる。さっきまで身体に良いものについて語り合っていただろう人が、帰宅後5分で「どん兵衛の幸福論」に到達した。この切り替えの速さは、もはや哲学だった。彼女は理学部化学科卒でザ・理系な思考もありつつ肌感覚の幸福を迷いなくキャッチする理屈を越境する力を持っている。ある日私はおそるおそる聞いた。「お、俺、そんなにアクティブなタイプじゃないけど、物足りなくない?」彼女は少し考えて言った。「確かに、、、そういうカッコ良さないよね、、、。」(終了のお知らせ)「、、、、。」一拍置いて、「うっそー、いいよそのままで!」――この人は、こういうことをする。突き落としてから、無二のタイミングで引き上げる。情緒のジェットコースターを、シートベルトなしで運転してくる。翻弄されているのか、守られているのか。正直、いまだによくわからない。ただひとつ確かなのは、18歳の彼女が口にした言葉が、今も形を変えて続いているということだ。「私たちはきっと大丈夫、何も恐れないで。」たぶん彼女は、言葉でそれを繰り返すことはない。代わりに、4メートルの岩から飛び込み、どん兵衛をズズズと勢いよく食べる。そして私は、そのたびに思うのだ。――ああ、この人といると、人生はやたらと自由だ、と。

院長 岡崎伸一