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僕はただプリンの上で優しく揺れるカラメルを見ていた①
高校三年の夏だった。僕はその頃、深夜ラジオに夢中だった。受験生としては、あまり褒められたことではない。夜になると、小さなラジオを机の上に置く。
照明を少し暗くする。ボリュームは、親に気づかれない程度。パーソナリティの声が流れてくる。夜の声だ。少しだけ優しくて、少しだけ遠い。葉書を書いた。ネタを考え、
ラジオネームを考え、「これなら読まれるんじゃないか」と思う。夜というのは、人を少し大胆にする。昼間なら絶対書かないようなことを、夜中の一時すぎには平気で書いてしまう。
ポストに入れるとき、少しだけ胸が高鳴る。もしかしたら読まれるかもしれない。
あの番組の中で、自分の葉書が。ラジオネームが呼ばれる。スタジオが少し笑う。パーソナリティがコメントを言う。そんな光景を、何度も想像した。
そして数日後、僕はラジオの前に座る。
今夜かもしれない。コーナーが始まる。一枚目。二枚目。三枚目。違う。
ラジオネームが違う。ネタの内容も違う。四枚目。五枚目。違う。
僕の葉書は読まれない。でも、まだわからない。今日はたまたまかもしれない。
次の週も、僕はラジオを聴いた。違った。その次の週も。違った。
そのころ僕は、歯学部を目指そうとしていた。しかし必要な科目は数学、物理、化学だった。そしてその三つが、きれいに苦手だった。英語と国語ならまだなんとかなる。
だが受験はそれだけでは通らない。僕は机に向かう。数学の問題集を開く。
三分後には、ラジオの葉書のネタを考えていた。
あるいは別の訓練をしていた。女子と普通に話せるようになるための、グラビア直視トレーニングだ。今思うと意味はよくわからないが、その頃の僕は真剣だった。
深夜ラジオ、読まれない葉書、グラビア直視訓練、ときどき数学。そんな高校三年の夏だった。
岡崎伸一
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