今も心にあの一冊「オーパ!」開高健著|新清洲駅の歯科・歯医者なら、岡崎歯科

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今も心にあの一冊「オーパ!」開高健著

名古屋市営地下鉄「中村公園駅」界隈は名古屋市西部に位置する下町風情に満ちた街、その生まれ育った街で私は鍛えられた。
小学生時分、オカダヤ百貨店で計3回カツアゲにあい、初め2回はお金をまき上げられた。3回とも同じ他校上級生と思われる目を細めてオラオラ体を揺らすいかつい3人グループだった。
初め2回は脅され完全にビビって言われるままに小銭を出してしまった。無傷でキレイなままお金だけ取られた情けなさに地団駄を踏んだ。特に2度目は1度目の反省を全く活かせなかった自分の臆病さに失望した。2度あることは的予感の中で3回目に出くわした。
また会ったな、と一人が蹴ってきたので今回は叫び反抗した。猛烈に反抗しながら店内に響く叫びをあげ、身体はエビがはねるような痙攣とともになんというか、その痙攣の中に3人を巻き込んで無茶苦茶になろうとした。
3人のうち一番威勢のよい1人はおまえ殺すぞ的脅しを続けてきたが後の2人は明らかに引いていた。「こっちは死ぬの怖くねぇから!」咄嗟に出た言葉に自分自身が驚いた。一番威勢の良かった1人も動きを止めた。周りの気づいている大人が誰一人関わろうとしないのを感じ、近くのワゴンらしきものを3人組に思い切りぶつけて逃げた。逃げに逃げた。百貨店を抜け2つの横断歩道を信号無視して車にぶつかりそうになりながら逃げた。(店のものを投げたのも信号無視ももちろん私の犯した罪です)逃げ切ったと確信したあたりに「オゼキ書店東店」があり、追手があるといけないと思い店内に入った。
店内には落ち着いたクラシック音楽。どうにも昂る息づかいをゆっくり鎮めた。店内には成人向け雑誌が豊富に陳列してあった。いつもと違い鼻血ワォではなく、さっきまでの興奮を反芻する気持ちがまさった。とにかく本好き少年が本を見にきた感を出さなくては。なんとなくそれっぽい本を見ようと思っていたら「オーパ!」があった。
写真も豊富で少年が興味深く見ていても不思議じゃない。というわけでゆっくりゆっくり「オーパ!」をめくりながら、「死ぬの怖くねぇから」ってよくそんなの言えたなぁ〜、などと自分の成長が嬉しくてニヤニヤしながらさらに「オーパ!」をめくるのでした。
アマゾン川流域の体あたり紀行文であり、アマゾンの大自然やピラニア、黄金の魚ドラドとの格闘、現地の人々に肉薄する写真集でもある本書。読んでいくと外連味なく痛快極まりない文章のリズム。無邪気にカニを頬張る開高さんの写真を見ながら、あのカツアゲ3人組もアマゾンに行っていつものようにカツアゲを試みて、挫折し、ピラニアと格闘し、現地の人々とふれあい、人生の本当の意味を全身で感じれば目も細めず丸く輝き、お金をまきあげるのでなく幸せの花を咲かせ続けることができるのに、と確かに、本気で、思った。

院長 岡崎伸一