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油山アップアンドダウン(下)
彼はひとしきり話を聞きそういうの好きなんよね〜とひと懐っこい笑顔で「兄さん、よかったらこの車で送るけん。」とシャコタンセドリックに招き入れてくれたのでした。車の助手席には彼よりも数段髪が明るい女の子が乗っていました。送ってあげるとか優し〜と彼を褒める女の子。聞けば彼は19歳で彼女も同じ歳、私は23歳。今日は彼女の誕生日とのこと。「ひえ〜そんな大切な日にごめんね。」と言いつつどんな成り行きか忘れたものの車が走り出すと同時にHappy Birthdayを歌うことになったのです。めちゃめちゃ大きな声で、まるで青春映画のワンシーンのように、今出会ったばかりの若者たちがエンジン音がグワングワンいうセドリックを上下に揺らしながら何度も何度もHappy Birthdayを歌い、笑い合うのでした。素敵なカップルでした。人生は何かと歌い、笑い、何かを感じあうことやけん、それ以上でもそれ以下でもなか。この二人はそう私に教えてくれた人生の先生でした。あっという間に下宿前に着くと彼は「あの根性があれば何でもできる。兄さんは大丈夫。」と言って帰ろうとしました。何かお礼をと思い、下宿に何かないかと探したのですがみかんの缶詰ひとつ・・・それでも二人は「うわぁ最高!」と言って喜んでくれました。全てが最高の時間。なんてことない一瞬の出来事。携帯電話もない時代、この後二人と会うことは二度とありませんでした。アホっぽい話かもしれませんし、危ない目にあったらどうするんだと言われそうですが、ただ、そこにいて自分と時間を共有してくれた一瞬の先生。今も決して忘れることはないのでした。 院長 岡崎伸一