歯医者の本音③ 治療の価値|新清洲駅の歯科・歯医者なら、岡崎歯科

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歯医者の本音③ 治療の価値

◾️「歯科治療はなぜ高いのか?」——その理由を知っていますか?

「えっ、こんなにかかるの?」「保険が効かないから高いんですよね?」

治療費の説明をすると、患者さんの口から驚きの声が漏れることは珍しくありません。でも、私はその度にこう思います。「もっともっとちゃんと説明しなきゃいけないな」と。

歯科治療の費用の理由——それは単に「材料が高い」とか「保険が効かないから」だけではありません。歯科治療というものの本質と、求められる精度のレベルの高さを知れば、きっとその理由に納得してもらえるはずです。

◾️ 歯は「生涯を共にする」精密機械

歯は毎日食事のたびに数十キロもの噛む力にさらされています。その力を分散しながら機能するのは、歯1本だけの力ではありません。全ての歯が連携し、バランスを取り合うことで、長年にわたり機能を維持しているのです。

これって、精密機械のギアが狂いなく噛み合っているのと同じ状態ですよね?たった1本の歯が不具合を起こすだけで、全体のバランスが崩れ、残りの歯にダメージが広がります。「歯科治療」とは、この精密機械の1つ1つのパーツを微細な精度で修復し、再び正しく機能させる作業。しかも、そのパーツは生体という絶えず変化する環境の中で動き続けている——これがどれだけ繊細で難しい作業なのか、想像できますか?

◾️「0.01ミリのズレ」が命取りになる世界

歯科治療に求められる精度は、0.01ミリ単位の世界です。詰め物や被せ物(クラウン)、インプラントなど、口腔内に装着するものは全て、ミクロの単位で噛み合わせを調整する必要があります。この精度を実現するには、高精度の型取り、最適な材料の選定、歯科技工士の手作業による繊細な調整——それらすべてが完璧に噛み合わなければなりません。

「銀歯1本入れるだけ」なんて簡単に思われがちですが、その背景には驚くほど多くの工程と職人技が詰まっているのです。

◾️ 時間と手間がかかる——それは「未来への投資」だから

例えば根管治療(歯の神経の治療)、歯の根の中は非常に細く、迷路のように複雑です。そこを徹底的に洗浄・消毒し、細菌を完全に取り除き、再感染を防ぐために封鎖する——これだけでも90分から120分の時間が必要です。ここで手を抜けば、再び炎症が起きて激しい痛みや再治療、最悪の場合は抜歯に至ります。精密な根管治療で歯を救えれば、その歯は10年、20年と機能し続けるのです。繊細な手技を助ける器具は一人の患者さんごとに惜しみなく捨てる必要があり、処置を確実に行うための前処置を幾重にも張り巡らせ、マイクロスコープで自らの処置の妥当性を直視し、決して妥協しないマインドを持って臨む姿勢が必要です。高い専門性を発揮するために常に知識知見技術を更新する、そのために多くの時間を割く必要があります。その歯科医師の努力の結晶が「治療の価値」です。

つまり、「治療費」とは単にその場の処置代ではなく、未来の自分の健康を守るための投資なのです。「高い」と感じるのは、未来のメリットが見えにくいからかもしれません。でも、きちんと治療しておけば、将来の痛みや追加治療のコストを大きく減らすことができるのです。

 ◾️ 保険治療の限界——「ベスト」ではなく「最低限」を目指している

もちろん、日本の保険治療は世界的に見ても素晴らしい制度です。急性期の痛みを抑えたり、最低限の機能を回復するために保険治療が果たしている役割は絶大です。

しかし、保険治療の目的は「ベストの治療」ではなく、「最低限の機能回復」です。

保険治療で使用できる材料、工程、時間には明確な制約があります。例えば、銀歯(パラジウム合金)は保険で安価に提供されていますが、その精度や生体親和性、耐久性は自費のセラミックに遠く及びません。「最低限でいい」のか、「より良い未来を目指す」のか——その選択が、保険治療と自費治療の大きな分かれ道になるんです。

 ◾️ 歯科技工士のリアル——「夜通しで銀歯を作る現実」

見逃されがちなのが、歯科技工士の存在です。

保険治療で作られる銀歯や入れ歯は、報酬があまりに低すぎて、多くの歯科技工士が1日に何十本もの銀歯を大量生産せざるを得ない状況にあります。

「1本1本、精密な技術で丁寧に仕上げる時間なんてない。」

そんな現実の中で作られる銀歯に、「長く持つ精度」や「生体の要求に応えるクオリティ」を求めるのは酷な話なのです。その結果、日本の歯科技工士の離職率は80%以上。この現状を知らずに、「安いから保険で」と何気なく口にしてしまう——でも、その裏には、誰も幸せにならない現実が横たわっています。

◾️ 自費治療の「価格」の裏側——精度・時間・技術の結晶

自費治療の価格、それは「精度」「時間」「技術」が凝縮されています。セラミックやジルコニアの被せ物は、生体親和性が高く、長期的に見て歯と調和しやすい。その一方で、設計から製作、調整に至るまで、最新のデジタル技術と歯科技工士の手作業による繊細な技術が求められます。

「保険の銀歯と何が違うんですか?」

そう聞かれたら、私はこう答えます。

「見た目の違いだけじゃなく、あなたの歯の未来に違いが生まれるんです。」

◾️「高い」という先入観ではなく、「価値」で考えてほしい

私は患者さんにこう伝えたいのです。「歯科治療は未来のあなたの生活を守るものです」と。見た目の美しさだけではなく、食事を楽しみ、笑顔で会話し、痛みなく暮らせる——その未来に投資する価値が、歯科治療の「価格」に含まれています。

「高いからやめておこう」ではなく、「未来の自分の健康のために必要か?」という視点で考えてほしい。私たち歯科医師は、その選択に対して常に誠実でありたい。患者さんが納得して、心から「この治療を選んでよかった」と思える未来を提供したい——それが私の切なる願いです。

院長 岡崎伸一