歯医者の本音② 思いのままに|新清洲駅の歯科・歯医者なら、岡崎歯科

電話をかける
WEB予約
お知らせ

お知らせ INFORMATION

ブログ

歯医者の本音② 思いのままに

◾️「歯に問題が起こるのは不摂生のせい?」

「また虫歯ですか?ちゃんと歯磨きしていますか?」
昔、歯科医院でこんな言葉を投げかけられ、小児患者であった私は少しバツが悪そうに頷く——この風景、何度繰り返されてきたことでしょうか。確かに、虫歯や歯周病の多くは生活習慣と密接に関係しています。しかし決してそれだけが原因ではありません。そもそも虫歯にならない習慣について、未だに深く浸透しているとは言えない状況です。この原罪が私を含む歯科医療者にあるという重い認識の中にあります。

◾️「歯磨きしてないからでしょ?」の無邪気な残酷さ

歯を失っていく人の中には、どんなに真面目にケアしても、なぜか歯のダメージが進行してしまう人がいます。反対咬合(受け口)や開咬(前歯が噛み合わない状態)の人は、80歳で20本の歯を残している割合がゼロという一例(2004年東京歯科大学調査)が示すように、噛み合わせや歯並び、バランスが歯の寿命に関連があることは意外と知られていません。「「歯磨きしなかったんでしょ?」という一言は、そんな不利な条件の上で懸命に戦ってきた人の努力を無情にも切り捨ててしまいます。その原罪が私を含む歯科医師にあることも重く感じ入るところです。

◾️歯は「孤軍奮闘」できるほど強くない

歯はそれぞれ役割分担のもとで噛み合わせを維持しています。噛む力は時に数十キロの負荷となり持続的に断続的に歯にストレスをかけ続けます。バランスの取れた噛み合わせとは、その力を分散して歯全体で受け止めるシステムが成り立つことと同義とも言えます。そして結果として、歯が長持ちすることにつながります。しかし、特定の歯だけに負担がかかると、歯にヒビが入り、ヒビはひろがり、小さな虫歯は一気に広がり、詰め物は外れ、痛みが続く・・まるでガラスが割れるように崩れていくのです。そして、噛み合っていない歯は「自分は大丈夫」と涼しい顔をしている裏で仲間の歯はストレスを一手に引き受け続けた帰結としてボロボロに崩れていく、これも一つの現実です。

◾️「歯の健康優良児表彰」って本当に必要?

私は25年来「歯の健康優良児表彰」に反対し続けています。持って生まれた噛み合わせや歯並びの良し悪しで、努力だけではどうにもならない部分があるのに、それを表彰するのは本質的ではないと思うからです。綺麗な歯並びで虫歯ゼロの子と、複雑な噛み合わせで懸命にセルフケアして虫歯2本で踏みとどまっている子を「優劣」で測るべきではありません。後者の子の努力する姿こそ心動かされますし、その局面にこそ手を差し伸べたいと思います。

◾️「予防」は戦略、ただの習慣ではない

インプラントも義歯も、私は本気で向き合ってきました。だからこそ言えるのは、「予防」とは単なる習慣ではなく、戦略的に未来を見据えることだということ。誰もが食事を楽しみ、語り、笑い合う——そんな当たり前の日常を守るために、「予防」としての役割の重大さを私は痛感しています。「今出来ること」と「今出来ることの限界を越えるためのより早い生育期への適切なアプローチ」が不可欠です。

◾️「保険治療」のリアル——それは本当に誰のため?

ここからは少し辛辣な話をします。保険治療の現実です。
銀歯——金銀パラジウム合金。この銀歯に対して多くの人が「見た目が悪い」とか「金属アレルギーが心配」と言います。でも、本当に問題なのはそこではありません。銀歯の精度を左右するのは、歯科医師と歯科技工士の技術力と時間。しかし、現在の保険診療報酬の低さは、この「精度を上げるための努力」を阻む構造と考えます。歯科技工士は、恐ろしく低い報酬の中で夜を徹して大量の銀歯を作る——そこに口腔内で長期に耐える精度を有する修復装置を作り上げることができるでしょうか?それは無理です、言いきれます。その現実を私たちは直視できているでしょうか?「保険でお願いします」と何気なく口にするその一言の裏側に、誰も幸せにならない現実が広がっていることを知ってほしいのです。

◾️「歯科治療は思っているよりはるかに難しい」

とても重要な事実を言います。それは歯科治療という行為が、みなさんがイメージするよりはるかに繊細で難しい、と言う事実です。自らの立場を高めるために誇張していっているのではありません。私たちが日々対峙する対象そのものが多角的で緻密な臨床力を要求してくるのです。歯の神経に関わる治療(歯内治療)、欠けた歯を補う治療(歯冠修復治療)、入れ歯やインプラントで噛み合わせを回復する治療(欠損補綴治療)——すべては過酷極まる口腔の環境の中で生き抜かねばならず、長期のストレスに耐えうるに余りある細部の精度が求められるんです。そして、その精度は技術だけでなく、時間と報酬という現実的な要素に強く左右されてしまうのです。この現実を知らされないまま、漫然と保険治療を受け続ける危険性について多くは語られてきませんでした。真面目な患者さんが歯医者さんに通えば通うほど窮地に陥る、そんな現実をこの岡崎歯科で決して展開させたくはありません。

◾️「俺たち歯科医師をもっと問いただしてくれ!」

患者さんにお願いしたいことがあります。僕たち歯科医師を、もっと問いただしてください!
「この治療、本当に最善だったんですか?」
「もっと良い方法があったんじゃないんですか?」
そうやって、僕たちの胸ぐらを掴んで、もっと厳しく問い詰めてほしい。
治療痕はレントゲンに残ります。その痕跡を見れば、その治療がどれだけの精度で行われたか、担当した歯科医師の良心がどれだけ費やされたか分かります。

◾️ベストを尽くしたい、お願いだ、ただベストを尽くしたいだけなんだ!

私は30年近く歯科医師をやってきました。患者さんの失望、怒り、決して忘れることのできない多くの十字架を背負って今日に至っています。それらすべては僕の至らなさの証です。それでも、僕はベストを尽くしたい。
「歯に問題が起こるのは不摂生のせい?」
——いいえ、それだけではありません。
私たち歯科医師は、もっとその事実を伝えなければならないのです。

院長 岡崎伸一